俺と鬼ともしもあの時あの場所で
突然だが――。
猫を飼うことにした。
俺と鬼と賽の河原と、If
俺と猫と賽の河原と
―――
「や、薬師! どうするんだこれ! 一緒に対策を考えてくれるんじゃないのか!?」
「いや、俺は服を買って来てやっただろう? 俺医者じゃねーし。きっと寝ときゃ治るって」
「治らなかったらどうする!?」
「うちで飼う」
「か、かっ!?」
「あーでもうち寮だったなー、ペットいけんのかな。首輪付けたら通らねーかな?」
「く、首輪……って、ペット扱いか!」
「んー、そうじゃね?」
「……っ……、だったら、だったらもし、ペット扱いなら」
「おー?」
「私を、飼ってくれるのか?」
「はい?」
今回のお話は、その四十九のもしものお話なので、話し半分程度に聞いてくれると助かる。
おまけ的な内容なので、色々と何も、気にしないように。
―――
色々と家族の反対はあったものの、皆納得してくれた。
無論、ご機嫌取りは中々大変だったが。
最終的に病気のリハビリ、という事でけりが付いた。
と、言う訳で、今日から猫李知さんの飼育日記を付けることにした。
一日目。
家に来てすぐの猫は怯えるものだが、李知さんも例に漏れないらしい。
と、言うよりはどうにも家の家族がどんな反応をするのかびくついていた模様。
しかし、その辺の事情は織り込み済みなので、肩すかしをくらい、ほっと胸をなでおろしていた。
あとは猫を飼うときの基本と言えば躾全般なのだが――。
流石李知さん、手洗いなどの躾は必要ないようだ。
と、言う訳で別方向の躾でない、芸を仕込むことにした。
「そうだな……、呼んだらにゃんと鳴くのはどうだ?」
「な、ななな、馬鹿にしているのか……!?」
「ほれほれ、いい声で鳴いておくれ」
「やらなきゃ、だめか?」
へたり込んで上目遣いで言ってくる李知さんに、俺は心を鬼にすることにする。
「だめ」
「に、にゃ……、できるかー!!」
引っ掻かれた。
前途多難なようだ。
二日目。
朝起きて餌を与えることにする。
内容はもちろんねこまんまである。
ちなみに猫手なので箸が持てない。
故にレンゲを使用しているのだが、どうにもぽろぽろ落とす。
「ほれ、汚すなよ、頑張って舐めとってみるか?」
俺はいたずらっぽく笑って言う。
「そ、それは、あの、その……」
どうやら人としての尊厳も捨てきれんらしい。
流石にそこまで俺も鬼じゃない、というか別に調教したい訳でもないので、李知さんの頬についたご飯粒を取って、食べる。
「な、な、にゃ……」
動揺している。
何故だ?
「さて、今日こそ鳴いてみようか」
「な、にゃ……、にゅ」
「惜しい! そこで恥を捨てて両手を頬の横辺りにあてると効果大だぞ?」
「で、できるかー!!」
まだまだ。
少しづつ継続させていこう。
三日目。
風呂に入れる。
「さあ、今日こそ鳴いてもらおうか」
「なあ、本当にやらなきゃだめなのか?」
「おう」
「即答か……。というか何故」
「その方が、そうだな。可愛いからかな」
面白いから、と言おうとしたが止めた。
「にゃ、んあ、にゃ、……にゃん」
恥ずかしそうに鳴く成人女性。
これは――。
萌である。
四日目。
ねこじゃらしを振ってみる。
その場に座っていた李知さんは、しばらく俺をジト目で見つめていたが、次第に、尻尾が左右にパタパタと揺れだした。
「ほれほれ」
……。
ぱたぱた。
「ほれほれ」
ぱたぱた。
少しずつ、李知さんの手が動く。
まるで、宙を掻くように。
手を出したいが心で押さえつけ、下げるように。
そして、振ること数分。
ぱしん。
手が動いた。
全力で猫じゃらしを掴もうとする。
俺は勝ち誇った瞳で李知さんを見つめた。
「うっ……、うー……」
恥ずかしげに眼に涙をためながら唸る李知さん。
なんだろうこの生き物は。
何故この李知さんは俺の嗜虐心にじゅうたん爆撃を繰り出すのだろう。
「ほらほら、李知さん」
「にゃ、にゃん」
「よくできました」
「は、恥ずかしいぞ……!?」
「ほれほれ頭を撫でてやろう」
「も、もっと恥ずかしい……!」
着実に、成果が上がっているようだ。
五日目。
特筆することはなく、李知さんは家のソファでずっと寝ていた。
俺がソファに近づくと、
「う……、うぅん……」
寝惚けて俺にすり寄ってくる。
仕方ないのでそのまま俺もソファの上で寝た。
可愛かった。
最近、藍音が猫耳を付けるようになった。
何故だ。
李知さんが寝てるので今日は芸を仕込むのはお休みだ。
六日目。
最近李知さんと由美の仲がいい。
今日も李知さんの上で由美が寝ている。
いい傾向だ。
由壱もよそよそしいながらも普通に接しているし、藍音も藍音で色々楽しんでいるようだ。
どう楽しんでいるか、と言えば、藍音は俺が育てたせいか俺に似てるところがある、と言えばわかるはずだ。
ともあれ、今日は家族みんな、俺は李知さんを膝の上に乗せてテレビを見た。
李知さんは最初はテレビにくぎ付けになっていたが、気がつくと、寝息を立てていた。
起きるまで、なで続けた。
「さあ、今日も一発」
「お、お、おやすみだ、にゃん……?」
「ぶふっ」
「お、おい薬師! 笑うな!!」
「いや、っくく、か、かわ、ぶはっ……」
「にゃぁあああッ!!」
引っ掻かれた。
痛い。
七日目
最近、李知さんの雰囲気が丸くなった気がする。
最初はそっぽを向いて端にいたのに、最近は自然とすり寄るように、隣にいたりする。
今日も、李知さんは俺の肩で寝ていた。
夕飯なので起こし、夕食後、俺はあるものを取り出した。
またたびである。
「薬師、その粉は……?」
風を起こしてまたたび散布。
李知さんは即座にへなっと、床に座り込んでしまった。
「あ、あぁ……ん、薬師ぃ、いったい、なにを……」
効果は絶大。
今なら何でも言う事を聞きそうだったので言ってみる。
「そうだな……、私はにゃんこの李知ちゃんですにゃんと、言ってみようか」
「私は、にゃんこのいちさんですにゃん!」
思ったより、つまらなかった。
寝てしまったので、寒いし、ベッドに運んで抱いて寝ることにする。
「あさ……? あれ……薬師? って服、着てない!? 昨日は……。薬師! 薬師!! 何があった!?」
「んー、朝のおはようはぁ……?」
「薬師、おはようにゃん! じゃない!! おい、起きろ、起きろ!!」
「いいものが聞けた。おやすみ」
「にゃあああああああああッ!!」
うちの家族仲は、今日も良好です。
―――
やっちまったぜ。
現在由比紀編執筆中。
だが、あっさりと十キロバイト超えられて、先にこっちを仕上げた次第です。
そんなこんなで、一部リクエストのあった李知さん飼育日記でした。
近いうちに由比紀編も完成するでしょうので、次はそちらで。
では返信。
奇々怪々様
読者の皆様に誰か一人でも心に響くヒロインがいればいいなと思っているのですが、スリーストライクでアウトにできたなら幸いです。
いやはや、ヒロイン、増やしたいですね。しかし、増えると物語を回すのが大変になってしまいますからねぇ。
いっそ単発ヒロインをばしばし出すのもありかと考えるようになりました。
その中で再登場希望があれば出てくる、というのもありかなぁ、と。
ミャーファ様
ふぅ……三途の河って広いんですね。
そちらは無事でしょうか。
実際、うちの人たちの平均年齢って、余裕で六桁七桁行きそうですね。
閻魔のせいで。ん? また客だ。最近来客が多いな。
春都様
やはりメインヒロインですからね。
ここらで一発締めてもらわないと。
こう、初期のほのぼのさが出したかったんですよね。
いやはや、これでも執筆歴は長くてですね。少しでも上手くなってないと困るのです。という訳で亀の歩みのようですがもっとうまくなって行けたらと思っております。
見てた人様
露店少女は一番再登場させたかったけどなかなか出せないキャラだったのです。
あれですよ、あまりのタイミングの良さに背筋が震えましたね。
さて、前さんの活躍で鬼っ娘の萌を再確認しましたので私も応えましょう。
鬼っ娘はぁッ! 人類の叡智の結晶ぉッ!!
ねこ様
足しげく落としに向かってますね。
もう強引にマイウェイするしかないでしょう。ひらりひらりかわすけど装甲は薄い気がする。
薬師と誰かが入れ替わったらあれですね、話し掛ける人がほとんど女の子で殺意が芽生えるという……。
ううむ、間があれば使わせてもらいたいと思います。
SEVEN様
でも実際、ヤンデレが出来上がってもおかしくはない状況ですね。
それを紙一重でかわす綱渡りがフラグメイカーのお仕事です。
さて、玲衣子さんは教育できるのでしょうか。
それと、ガーターベルトは外さない方向でFAですね。
黒茶色様
私の小説で癒されていただけたならこれまた幸い。
人の心に影響を与えるのが作家の夢ですからね。
人の心に残る作品が書けたらいいなと思っております。
とりあえず只管萌えを描いてますが。
Eddie様
一応ほのぼのラブコメを掲げてますからね。
実はごった煮ですが。ごった煮ながらもほのぼのしたいですね。
露店少女は会話がぽんぽん飛んで好きです。なのに中々出てこれない……
ただいま、設定集を改定中であります。もう少々待っていただければ最新の奴が出せるかと。
ハゲネ様
感想ありがとうございます。
最近は繋がった話しが多かったですから前さんが中々出てこれなかったんですよね。できる限り皆を描写して行きたいなと思っております。
空気なんて暁御でじゅう、げほんげほん、大丈夫、暁御の出番も考えてあります。
しかし、ひざぱ、懐かしい名前を聞きました。
最後に。
何故……
手を出さぬのだ。